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猫は歯の病気にかかりやすい!? 猫に多く見られる3つの「口内トラブル」とは |獣医師解説

2025/12/04

猫は歯の病気にかかりやすい動物。猫に多く見られる口内の病気について正しく理解し、予防や早期発見・治療に努めましょう。

今回は、猫に多く見られる3つの口内トラブルについて、獣医師の藤田桂一先生に解説していただきます。

猫に多く見られる口内トラブル(1)歯周病


歯磨きする猫

歯周病とは、歯肉炎と歯周炎の総称で、歯の周囲の組織(歯肉、歯根膜、歯肉粘膜など)が炎症を起こし、進行すると歯を支える歯槽骨(しそうこつ)まで破壊されてしまう病気です。

歯に付着した歯垢や歯石の中に潜む細菌が原因で、悪化すると歯が抜け落ちるほか、口腔内の細菌が血流にのって全身に広がり、悪影響を及ぼすおそれも。とくに近年注目されているのが、慢性腎臓病との関係です。歯周病関連の細菌が血流にのって腎臓に届くと、炎症を引き起こし機能低下を招くことが判明しました。歯周病は猫がかかりやすい慢性腎臓病のリスクを高める可能性があるといえます。

なお、歯周病は2~3才以上の猫の80%以上が罹患しているといわれ、気付いたときには重症になっているケースも珍しくありません。

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中程度の歯周病の症例


中程度の歯周病の症例

臼歯(奥歯)に大量の歯石が付着し、歯肉が赤く腫れています。とくに歯と歯肉の境目で炎症が進行し、歯肉が後退しています。

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歯石になるスピードは人の3倍 歯磨きで予防を


猫は歯垢が歯に付着して数時間後には歯肉に炎症が起こり、約1週間で歯石になることが報告されています。このスピードは、人のおよそ3倍。猫の歯周病の予防には、毎日の歯磨きが不可欠です。また、歯磨きを習慣化すれば、歯周病の早期発見・治療が可能になり、重症化を防げるでしょう。

猫に多く見られる口内トラブル(2)歯肉口内炎


フードを見つめる猫

人の口内炎は数日で自然に治ることが多いですが、猫の口内炎は重症化しやすい病気です。

ほとんどのケースで口内粘膜と歯肉の両方に炎症が見られるため、「歯肉口内炎」と呼ばれ、強い痛みを伴う炎症が口の奥まで広がって、食事や水を取るのも難しくなるほど悪化する場合も。

また、炎症が慢性化し完治が難しくなりやすい病気で、原因はよくわかっていませんが、猫自身の免疫システムの異常や、ウイルス・細菌が関係していると考えられています。

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歯肉炎の症例写真


歯肉口内炎の症例写真

歯肉口内炎がとくにできやすいのは、上あごと下あごをつなぐ尾側粘膜という部位。この症例写真では、尾側粘膜を含む歯肉からのどの広範囲に炎症が起きています。

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毎日の歯磨きのほか、感染リスクを下げることも大切


歯肉口内炎の予防には、口内の細菌を減らすことが重要です。毎日の歯磨きで歯垢をできる限り取り除きましょう。

また、完全室内飼育や定期的なワクチン接種で、ウイルスの感染リスクを下げることも大切。免疫力が落ちると発症しやすくなるため、栄養バランスのよい食事や安心できる環境づくりで、免疫力を維持しましょう。

猫に多く見られる口内トラブル(3)歯の吸収病巣


口元を触れる猫

吸収病巣とは、破歯細胞(はしさいぼう)によって永久歯が溶かされ、吸収される病気です。

破歯細胞は歯肉に含まれていて、本来、乳歯から永久歯へ生え変わるときに歯根を溶かし、生え替わりを助ける役割をしますが、なぜ永久歯に作用するのかは不明です。無症状のことも多いですが、痛みから食欲がなくなったり、歯肉から出血したりするほか、口臭、よだれなどが見られることも。

以前は、虫歯と誤認されていましたが、酸によって歯が溶ける人の虫歯とは異なる病気です。

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歯肉炎の症例写真


歯の吸収病巣は、以下の3タイプに分けられます。

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タイプ1


歯の吸収病巣タイプ1

歯冠(歯の見えている部分)のみが溶け、歯根が残るタイプ。見た目では赤い歯肉が歯冠を覆い、X線写真では歯冠部分がところどころ黒く見えます。

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歯肉が歯冠を覆っている


見た目にあらわれる症状
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タイプ2


歯の吸収病巣タイプ2

歯冠も歯根も溶け、骨組織に吸収されるタイプ。中央の歯の歯根の輪郭が確認できますが、右の歯の歯根は溶けて輪郭がなくなっており、骨組織に置き換わっています。

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タイプ3


歯の吸収病巣タイプ3

タイプ1とタイプ2が併発しているタイプ。1つの歯に2つの歯根がある場合、片方の歯根のみ吸収されている状態。写真の左端の歯は、左側の歯根のみ吸収され、骨と同化しています。

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予防法はなく早期発見を心がけることが大切


原則として予防法はありません。見た目での罹患率は約30%ですが、歯科X線検査で調べると約60%に上り、見た目では気付きにくいのが特徴です。また、慢性腎臓病や歯周病との関連を指摘する報告も。早期発見のためには、定期的な口腔検診が重要です。

猫が元気で長生きするためには、歯の健康が欠かせません。愛猫の歯について気になることがある場合は、かかりつけ医に相談してみましょう。

お話を伺った先生/藤田桂一先生(フジタ動物病院院長 獣医学博士)
参考・写真/「ねこのきもち」2025年11月号『構造・役割・病気・お手入れ まとめて理解することで、知識深まる! 猫の歯のすべて』
文/長谷部サチ