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白石加代子と風間杜夫が神々の国生み奮闘記を面白おかしくお届けする朗読劇「古事記」開幕

2026/09/12


2026年9月12日(土)より、東京・シアター1010を皮切りに兵庫、群馬、栃木、北海道の全国5都市8か所にて、朗読劇「古事記」が開幕しまし



壮大な神話の物語を、くすっと笑える演出とともに、どこか身近なものとして楽しめる一作だ。
ステージ上に用意されたのは、ベンチと、それを照らす2本の電灯のみというシンプルな空間。まるでのどかな公園に散歩へやってきたかのような雰囲気のなか、日傘をさした白石加代子が優雅に現れる。反対側から登場した風間杜夫がエスコートし、ベンチに腰かけたふたりが、イザナギとイザナミの出会いから物語を紡ぎはじめる。
題材は古事記でありながら、ふたりが生み出す空気は実に軽やかだ。風間は関西弁で語り、神が恋に落ちる瞬間を「ビビビ」とユーモラスに表現してみせる。序盤のイザナギとイザナミの物語から、これは肩肘を張らずに楽しめる作品なのだと提示してくれる。
風間がおちゃめなポーズを決め、白石がアメノウズメの踊りを披露するなど、ベンチはありながらも動きが多いのも印象的。掛け合いそのものもコミカルだが、それ以上に、ふたりの絶妙な間の取り方が面白さを何倍にも膨らませていく。長年舞台を牽引してきた大ベテランならではの巧さを、まざまざと見せつけられた思いだ。
音楽や小道具を駆使した演出も楽しい。クラシックのロックアレンジから、有名探偵作品を思わせるジャズナンバー、南の海を感じさせる陽気な楽曲まで、場面を彩る音楽は変幻自在。それらが、ボードやパネルといった実に演劇らしいアナログな小道具、そして軸となるふたりの芝居と響き合い、唯一無二の世界観を立ち上げていた。




そして何より、ふたりが心から楽しそうなのだ。朗読台本を手にしながらも、白石が踊れば風間が「よっ、いいぞ、白石!」と盛り上げ、ベンチに戻っては「次どこだっけ?」とページを教え合う。時に役を離れ、白石と風間としてちょっとした雑談を挟む瞬間もある。その大らかな空気感は、どこか雄大な神話の世界そのものと通じ合い、神々の物語をぐっと身近なものにしていた。男女が入れ替わり、ひとりで複数の役を演じ分ける場面も多いが、そのつど丁寧な説明があり、役ごとの色付けも鮮やか。誰がどの神を演じているのか、迷うことなく物語に身をゆだねられる。
ベテランふたりの真骨頂は、神話の名場面でこそ発揮される。白石が見せるのは、黄泉の国から戻ったイザナミ。「見るな」と言った約束を破った夫への怒りに我を忘れ、鬼気迫る形相で追いすがるさまは、ユーモラスななかにも思わず息を呑む迫力が潜む。一方の風間は、クシナダ姫との結婚のためヤマタノオロチ退治に挑むスサノオを熱演。このオロチ退治が、まるで凶悪事件の犯人を追い詰める捜査劇のように描かれる趣向で、どこかで見たことのあるサスペンスドラマ風の風間がちらりと顔をのぞかせる遊び心も楽しい。
声と語り、そして2人の身体だけで、驚くほど豊かに神話の世界は広がっていく。白石加代子と風間杜夫という稀有なふたりだからこそ立ち上がる古事記ワールドを、ぜひ劇場で味わってほしい。