ただ聞くだけじゃない、傾聴力とは。心で話を聞くことの大切さ

傾聴力とは、ただ話を聞くだけではありません。相手を深く理解し、相手の本当に言いたいことをうまく引き出す方法です。
話を聞くというのは実はとても訓練が必要な行為で、傾聴もなかなかすぐにはできないかもしれません。
しかし傾聴ができるようになると、上司を理解し、部下の能力を上手く引き出すなど、仕事においてもプラスに働くことがたくさんあります。
今回は、傾聴力とはなにか、その意味やメリットなどについてご紹介します。

傾聴力とは相手を理解するためのコミュニケーション法

傾聴力とは、ひと言でいうと「心で聴く」ということです。
英語でもlistenとhearの違いがあるように、日本語でも「聞く」と「聴く」は違うんですね。
傾聴力は、ただ話を聞くだけでなく、相手の考え方、相手の世界観などを深く理解し、良い人間関係を築くための力なのです。

相手の気持ちを尊重し、共感することでコミュニケーションも円滑になり、何に悩んでいるのか、どんなことが望みなのか、なんてこともわかるようになるのです。

話を聴く意識が違う

そもそも話を聞くという姿勢、意識が普通とは全く違います。
「聞く」というのは、文字通り音声を聞き取るということで、耳に入って来たことに対して「そうだね」など軽く同意するような状態。英語でいう「hear」です。
しかし「聴く」は、相手を理解しようという気持ちがないとできないことです。

ただ音を聴くだけではなく、なぜ、どうしてと考えながら聴いたり、相手の思考を理解するために全神経を集中させて話を聴きます。

英語でいうと「listen」ですが、心がどこに向いているのか、注して聴いているかという点が普通の「聞く」とは違うのです。

相手の気持ちに寄り添うこと

傾聴に必要なのは、理解や共感です。ただ話を聞くだけでなく、相手の気持ちに寄り添うことが必要なのです。

真剣に話を聴き、理解しようと努めることで、相手が本当に話したいこと、悩んでいることなどを引き出すことができます。

そうすると相手は「自分の言いたいことをわかってくれた」と思うので、人間関係も円滑にしていくことができるのです。

傾聴力のスキルを上げることのメリット

傾聴力とは何かがわかれば、ビジネスシーンにおいてどれだけのメリットがあるかもわかるでしょう。

相手への理解が深まる

自分が話をした時に、右から左へ、「ふん、ふん、そうなんだ〜」なんて適当に聞かれたら、話す気がなくなりますよね。
この人は、ちっとも私のことをわかってくれない。そう思ったら、心も開けないと思います。適当な話しかしなくなるでしょう。

でも、真剣に聴いてくれていたら?そう、私そういうことを言いたかったの!と感じることができたら、その人に心を開いて話ができるようになると思います。

傾聴力があると、このように自分を信頼し、深い話をしてくれるようになるんです。
そうするとさらに相手への理解が深まり、人間関係も良好になっていきます。

相手との信頼関係を深めることができる

傾聴している時は、自分の意見を押し付けるというようなことはありません。
たいていの人は、相手の話を聞いている時に「それはこうした方がいいよ」とアドバイスしたくなってしまうと思うのです。

それが、自分が経験したこと、知識のあることだとなおさらで、よかれと思ってあれこれ意見してしまうのですが、相手はそれを求めていないことの方が多いものなのです。

ただ悩みを聞いて欲しかっただけなのに、その人の価値観を押し付けられたら話したくなくなりますよね。
そこで傾聴力のスキルがあると、ただただ相手の気持ちに寄り添い、理解しようと真剣に話を聴くことができます。
「この人は話をちゃんと聴いてくれる」と相手はあなたを信頼するようになるのです。

相手が変化し成長する

人は、話をすることで気づくことがたくさんあります。
自分一人で悶々と悩んでいる時にはわからなかったけれど、真剣に話を聴いてくれる人と話していたら「そうか、そうだったんだ」と気づくことも出てきます。
ということは、あなたに傾聴力があれば、相手は話しているうちにいい気づきを得られたり、変化が起こったりすることもあるということ。

そうすると、聴いているあなたにとっても、相手の良いところがさらにわかるようになったり、変化して成長していく過程を見ることができたりするのです。

誤解が生じにくい

仕事の場で話の行き違いはよくあることです。自分はこう言ったつもりなのに、相手の受け取り方が違っていて問題が起きた、なんてことがありますよね。

「こう言っていると思った」と、自分なりの解釈で動いてしまうと思わぬミスにつながることもあります。

また、「そんなつもりで言ったのではないのに」と、言葉が足りないことでいらぬ誤解を生んでしまうことも。
しかし傾聴力があれば、きちんと理解できるまで話を聴くので、そのような行き違いが生じにくいのです。

自分の世界も広がる

外から見ているだけではわからないことってたくさんあります。
いつも楽しそうにしているこの人がこんなことで悩んでいたなんて。何気ない言葉にこんなに傷ついていたなんて。
傾聴力があれば相手を深く理解することができるので、表面上の付き合いではわからないことまでわかるようになります。

相手の立場に立つことで、今まで自分の中にはなかった考え方を知ったり、人の心の奥深さを知ったりして、自分の世界をもっと広げるコツができるようになるのです。

相手の立場に立つということは、自分の価値観を一度脇において相手の世界を丸ごと受け止めるということですから、それだけでも考え方が柔軟になりますね。
物事を自分の価値観で決めつけることがなくなるので、人との関係が良くなるだけでなく、自分の考え方を振り返るいいきっかけにもなります。

ビジネスシーンでももちろん役立つ

元々はカウンセリングなどで使われて来た手法ですが、ビジネスの場でも重要な役割を果たします。
相手が上司であっても部下であっても使えるスキルであるというのが素晴らしい点です。
職場で何か相談すると、求めていない答えを押し付けられることはありませんか?
そんなことは聞いてない、ただ話を聴いて欲しいだけと思っても、相手がよかれと思って話してくれることを聞かないわけにもいきません。
しかし、理解してもらえない虚しさを感じますよね。
また、商談などで顧客の本当にニーズを引き出すためにも、自社製品を売り込むのではなく、相手の心に寄り添って話を聴くことが必要です。

だからこそ、傾聴力なのです。傾聴のスキルがあれば社内でも社外でも、人と信頼関係を築くのにとても役立つでしょう。

傾聴力を身につけるには?誰にでもできるトレーニング方法

でも、心で話を聴くというのは具体的にどうすればいいのでしょうか。傾聴力のスキルを磨くためのトレーニング法についてお話しします。

態度や仕草も大事

真剣に聴くといっても、じっと黙って聴いていても相手は負担に感じてしまいます。
相手がリラックスして話ができるように、仕草などにも気をつけます。

  • 視線をあちこちにそらさない
  • 時計を見たりスマホを見たり、気が散るようなことをしない

このようなことは当然のマナーですね。

そして相手がリラックスできるように、自分もリラックスします。柔らかい表情で、口角を少しあげるようにすると、自然な笑顔になりますよ。

身体は相手の方にきちんと向けて、「しっかり聴いていますよ」という態度で話を聴いてください。

話すスピード、トーンを相手に合わせる

早口な人もいれば、ゆっくり話す人もいますよね。
話すスピードがあまりに違うと、人はストレスを感じてしまいます。ですから、話すスピードを相手に合わせるようにします。
これを「ペーシング」といいます。

明るく元気に話す人なら同じように元気に、ゆっくりと落ち着いて話す人ならこちらも落ち着いたトーンで。

ペースやトーンを合わせることで、ストレスなく話してくれるでしょう。

表情も相手に合わせる

例えば、相手がニコニコして楽しそうに話をしているなら、自分も笑顔で話を聴くようにします。
逆に悲しそうに、辛そうに話しているなら、その気持ちをしっかり受け止められるように、自分も悲しい表情で真剣に話を聴きます。
このように表情や動きを相手に合わせることをミラーリングといいます。

相手は自分の話を真剣に聴いてくれている、自分と世界観を共有してくれていると感じやすくなります。

ただ、やり過ぎは禁物。全く同じ仕草や表情を常にしているとわざとらしくなるので気をつけてください。

適度な相づちを入れながら話を聞く

傾聴とは真剣に聴くことであって、黙って聴くということではありません。
ですから適度な相づちが必要です。

  • うんうん、それで?それから?
  • そうなんだね。
そんな風に、適度に相づちを打って「ちゃんと聴いていますよ」ということがわかるようにすると、相手も安心するのです。

相手が言ったことをそのまま返す

おうむ返し、またはバックトラッキングという手法ですが、相手の言ったことをそのまま返します。
「こないだ仕事ですごくいいことがあったの!」といわれたら、「へえ、いいことがあったんだ!」とそのまま返す方法です。
これもやり過ぎは禁物ですが、相手への共感を示すことができます。
多くの人がやってしまいがちなのが、「こないだいいことがあったの!」といわれた時に、「へえ、そうなんだ。私もいいことがあったんだよ!」とつい自分の話をしてしまうこと。
これでは傾聴になりませんね。

相手のいうことを繰り返すことでさらに先の話が聴きたいな!という意思表示にもなるので、傾聴を心がける時は適度におうむ返しを入れてみるといいでしょう。

話をまとめて言い換える

おうむ返しばかりでは話がしつこくなってしまうので、時折相手の言いたいことをまとめて返す、という方法も使ってみてください。
とくに女性は「ああして、こうして、こうなって」ととりとめもなく話す人も多いので、「それはこういうことなんだね」と相手の言いたいことを要約して伝えるのです。

誤解が生じていないかを確認するためにも必要ですし、的確にまとめることで「私の言いたいことをわかってくれている!」と相手も安心します。

これは慣れないと難しいかもしれませんが、常に「この話の要点はなんだろう?」と考えるクセがつくので、話の理解力もアップしますよ。

適度に質問を挟む

話の合間に適度に質問を挟んでいくことで、話をどんどん広げていくことができます。
ただこの時に気をつけたいのは、はい、いいえだけで答えられる質問にしないこと。
例えば仕事でミスをしてしまって…と落ち込んでいる同僚に、「大丈夫だよ、誰でもミスはするんだし。疲れてたんじゃない?」なんて言っても何の慰めにもならないですね。
そうだね、疲れてたかもね、で話が終わってしまいます。

そこは「大変だったね」とまず共感することが大事ですし、仕事のミスを引きずっている本当の理由を聞き出したいところですよね。

何か他にも問題を抱えているのか、何を話したいのか、じっくり聴いてあげることが必要でしょう。
「どうしたの?気になることがあるなら聴くよ。」など相手が話しやすくなるような質問を考えてみましょう。
もちろん、話の内容によって質問も変わってきます。

  • あなたはどうしたいの?
  • あなたはどう思っているの?

など、相手の考えを聴けるような質問を考えてくださいね。

相手が考えている時はじっと待つ

沈黙が苦手な人は多いですね。相手が黙ってしまうと、つい代わりに話をしたくなってしまいますが、沈黙を恐れてはいけません。自分がべらべら喋るのが一番いけません。
相手がじっくりと考えている時間は邪魔をせずに、じっと待ってください。

相手の立場を認める

相づちを打ちながら、相手の存在、頑張りなどを認める言葉を挟んでいけると、相手からの信頼度がグッと増します。

  • いつも朝早くきて掃除などをしてくれているよね。
  • 人が面倒に思う雑用を積極的にしてくれているよね。

など、その人が頑張っているであろうことをあえて言葉にして伝えると、自分を理解してくれているなと感じることができるのです。

ちょっと難しいですが、これは普段から周りの人の仕事振りなどをよく見ておくことが大事。いざという時に出せるよう、よく観察しておくといいでしょう。

ただし、大事なのはあなたが本当にそう思っていることでないと、伝える意味がないということです。
適当に相手を褒めるようなことを言っても、心には響かないので注意してください。

傾聴力は心でするもの。うわべだけのスキルではない

傾聴力を磨くトレーニング法をお伝えしましたが、これらの方法は上辺だけのスキルではありません。
練習はもちろん必要ですが、「こうすれば傾聴力が身につく」という単なるテクニックではないのです。

寄り添う心がなければできない

例えばおうむ返しをしたり、相づちをしたりしていても、心の中で別のことを考えていたらどうでしょうか。
さっさと長い話を切り上げて帰りたいわとか、つまらない話だわ、なんて思いながら話を聴いていたら、それは相手に必ず伝わります。
いくらテクニックを使っても傾聴していることにはなりません。それは「傾聴しているふり」です。
傾聴するには、テクニックの前に心が伴っていることが何より大切です。

目の前にいる相手に興味を持ち、相手の世界観、価値観を受け止める。それができれば、テクニックは自然と身についていきます。

自分の価値観を脇において人の話を真剣に聴くというのは、とてもエネルギーを使いますので、疲れます。
もし話を聴き終わった後で疲労感も何も感じないなら、きっと傾聴はできていません。

自分のことのように受け止めて話を聴いていたら疲れます。疲れるようになったら傾聴力が身について来た証拠かもしれないですね。

傾聴力を高めるには自分の心に余裕を持つことが大事!

他人の心に寄り添って話を聴くには、自分の心に余裕があることが大事です。
テクニックだけでなく、常に心に余裕を持っていること、これが傾聴力のスキルを身につける上で一番大事なことかもしれません。
そして傾聴力は単なるテクニック、スキルではなくて人を深く理解するための1つの方法であるということを忘れず、誠意を持って話を聴くようにしてください。

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