ストレスチェック制度とは?行うと何がわかり、何が変わる?


現代社会では労働者の「体の健康」だけでなく、「心の健康」を守ることも企業の努めであるということは当然のように浸透してきました。

しかし、この概念はこの10年で訴えられ、世間に受け入れられたもので、20年前にはこういった「心の健康」はある種のタブーとされ、企業がどうこうできるものではないという暗黙の了解がありました。

心の病の原因の1つとして、労働環境や人間関係における過剰なストレスというものがあります。
少なくとも企業として、この「なんとかできるかもしれない部分」は改善するべきというのが現代社会の考え方です。その改善策のひとつとして厚生労働省が打ち出したのが、このストレスチェック制度です。

厚生労働省が導入した労働安全衛生法の一部のこと

ストレスチェック制度は「労働安全衛生法」という法律の改正に伴って、2015年12月からある一定条件を満たす事業所(企業や事業を行っている場所)に義務として定められたものです。まずは簡単に概要を理解してみましょう。

労働者にも事業者にもメリットがある

ストレスチェックを行うことによってメリットがあるのは「どちら」なのでしょうか?

正解は労働者(働く人)、雇用主(事業者)両方にメリットがあります。

<労働者のメリット>

  • 自分のストレス状態を客観的に把握できる
  • 必要であれば医師など専門家の意見が雇用側に届けられる
  • ストレス緩和に対する具体的な対策を講じる方法を見つけやすい

<事業者のメリット>

  • 看過されやすい職場環境の状態を把握できる
  • 労働者の現状を把握し、改善に向けた対策を具体的に理解できる
  • 改善策を実施することにより労働者のストレスが減れば、人手不足の解消、生産性の増加、社会的信頼度の向上につながる

噛み砕いて言えば「ストレスチェックを行い、環境を改善する」という企業努力が法令化されたことによって、労働者が堂々と自身の心の健康を守るための声を上げやすくなったということになります。
そして、労働者側の声を聞く、という姿勢は企業としての社会的信頼度を非常に上げるため人員不足や離職率低下への対策にもなりますし、働き手を守る姿勢は結果として生産性を高め企業利益にもつながるという考え方です。

結果はまず労働者に渡り、希望がなければ開示はされない

ストレスチェックを実行したら、まずはその結果は労働者に通知されます。本人の同意がない限りは、企業側に通知・開示するのは禁止行為です。

その通知をもとに、労働者が必要ですれば医師や企業保健師など専門家のアドバイス(面接指導)を受けることができます。労働者が希望しない限りはこうした面接指導は実施されず、また希望したとしてもその旨を企業側に通達されることはありません。

更に、この希望をしたという事実、面接指導を受けたという事実を理由に労働者側に対して不利益な取扱をするということも禁止行為です。
労働者の心の健康を守るための行為に対し、企業側は干渉することは出来ないということになります。

50人以上の労働者がいる事業所には義務付けられている

ストレスチェック制度は労働安全衛生法という法律の一貫ですので、一定の条件を満たした事業所には義務として課せられています。

  • 常時50人以上の労働者を使用する事業所
  • 複数の支店や営業所を要する場合はその環境ごとに判定を行う
  • 「常時勤務」であればパートやアルバイトも対象となる

50人の労働者のうち、45人がパートやアルバイトなどの非正規雇用者だとしても、勤務者であるならばストレスチェックを行う必要があります。また、頻度は1年に1度は実施する必要があります。

ストレスチェック制度の実施方法や流れは?

ストレスチェックは厚生労働省がその流れや実施方法、実際の推奨設問集などを公開しています。公開されている実施方法をご紹介します。

労働者側なら質問表に回答していくだけ

ストレスチェック…とここまでの説明では非常に難しいイメージを持たれた方もいるかもしれませんが、実際に行う場合「労働側」が行うことは「質問に回答していくだけ」という非常にシンプルなものです。

<設問例>
A.あなたの仕事について、当てはまるものに○をつけて回答してください。
 1、非常にたくさんの仕事をしなければならない
 2、時間内に処理がしきれない
 3、自分で仕事の順番ややり方を決めることができる
 ・
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 ・

このように、質問に対し「現状そうである」「そのように感じる」という部分を率直に回答して、担当の医師や保健師に提出を行えば完了です。

事業者側が選定した医師や保健師などが集計、評価

事業者側はストレスチェックを実施するにあたって、医師や保健師を選定します。この選定された者のことを「実施者」として指定します。

実施者、及びその補助者が、労働者が回答した質問表を回収、集計、評価まで行います。労働者の回答をこの選定された者以外が回収や閲覧を行うことは禁止行為です。

「企業側が選定した医師(実施者)」といっても、ここにも条件があります。

  • 医師免許を有する者、産業医
  • 保健師
  • 厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師あるいは精神保健福祉士

また、回収や集計、結果の発送などは企業が選定した補助者(実施事務従事者)も従事することが出来ますが、個人情報を取り扱うため、たとえ企業側に開示を求められたとしても、労働者の同意がない限りは本人以外に通知は出来ません。
なお、この実施者や実施事務従事者は外部委託をすることも可能です。

結果はまず本人に通知され改善へのステップを明示

実施者が集計した回答に基づき、「高ストレス、医師による面接が必要」と評価された通知を受け取った労働者は、1ヶ月以内に事業者側に申し出を行えば面接指導が実施されます。
この申し出があった場合、事業者はすみやかにそのための時間を作り、労働者に面接指導を受けられる環境を整えなければなりません。
また、「面接指導を希望する」という申し出があったという事実によって労働者に不利益をもたらす行為(異動や減給、退職勧告など)が行われるのは禁止です。

医師との面談により環境や就労義務についての改善が行われる

事業者は労働者が面接指導を受けてから1ヶ月以内に、面接指導を行った医師から意見を聴取しなくてはなりません。
その意見に基づき、すみやかに労働環境改善への対策を行う必要があります。

  • 労働時間の短縮
  • 出張や残業などの超過労働時間の短縮、制限
  • その他医師が必要とした意見の内容の反映 など

また、この医師からの意見聴取、その報告の記録は最低5年間の保存を行います。
個人情報であるため、鍵のかかる場所を作りきちんと保存を行ってください。これを怠った場合、労働安全衛生法及び個人情報保護法に抵触する可能性があります。

ストレスチェック制度による人事評価や不利益な取扱は禁止

ストレスチェック制度の実施は、人事権を持っている立場の人間は行うことが出来ません。また、ストレスチェックに携わった人間には守秘義務が課せられます。
さらに先述している通り、このストレスチェック一連の中で行われる申し出や意見聴取の結果により労働者側に不利益となる行為を事業者側が行うことは禁止されています。
こうした取り決めが法令化されていることによって、労働者に安心してストレスチェックを受けてもらうことで、先に述べたような「企業(事業者)側のメリット」が生まれるのです。

実施されなかったらどうなる?対象外の社員もいる?

ストレスチェック制度が法令化されたことによって、何が変わるのでしょうか。最後にどのような点が今までと違うのか、またこの制度の対象外となるのはどうした人なのかを確認しておきましょう。

法令化されているため未実施なら安全配慮義務違反に

ストレスチェックが制度化されたことで、最も大きくこれまでと変わった点は「法令義務に則っているか」というポイントです。
ほんの少し前までは、健康管理の中に「心」は入っていませんでした。嘘のような話ですが、きっと今の50代、60代の方は未だにそう感じている人も少なくはないのです。

しかし、「心」と「体」は表裏一体であり、心が病めば体も病み、その逆もまた然りというのが当たり前の知識となったことで「労働者の心を守ることも事業者(雇用主)の義務」という法律が生まれたのです。

法令化されたことでこれを実行に移さない事業者は「安全配慮義務違反」に問われることになりますし、個人情報保護法と併せて考えれば悪質な未実施、あるいは禁止事項に抵触する行為はどちらも法令違反となり刑罰に問われることになります。
企業、事業者としてはそうしたペナルティは何が何でも避けなければなりません。
事業者を守るためには、労働者を守らなければならないという考え方を、この法令を制定することによってこれまでより更に明確に浸透させようというのが行政の狙いです。

労基署へ実施報告がない場合も義務違反に問われる

「実施した」と偽ったり、あるいは実施したにも関わらず報告を怠った場合にも何らかの指導やペナルティが課せられます。

事業者は厚生労働省に実施報告を行う義務があり、これは1年に1度とされています。この期間を超えても実施報告がない場合、あるいは制度に則った実施が行われていない場合も安全配慮義務違反として指導や警告が行われることがあります。

対象の事業所である、対象者であるにも関わらずストレスチェックが実施されていない場合は、厚生労働省あるいは労働基準局へ申告してください。この場合も申告者の情報は守秘義務として保護されます。

ストレスチェック制度実施義務の対象外者とは

ストレスチェック制度対象の職場で働く者であったとしても、それを履行する対象とならない人もいるのでチェックしておいてください。

  • 契約期間が1年未満の社員
  • 所定労働時間の3/4未満の短時間労働者
  • 10人以下の事業者

つまり、会社の就労規則上にある所定労働時間の3/4(1日8時間であればおおよそ6時間未満程度)の働き方であれば、正社員であったとしても実施義務の対象となりません。
また、入社したてなど契約開始から1年に満たない者についても、1年に1度の実施義務となるこの制度の対象外となります。
10人未満の事業者については実施が義務とされていませんが、実施してほしいという労働者の「総意」があれば事業者は実施をすることが推奨されています。
こうした場合労働者個人の希望ではなく総意となるので、労働者同士できちんと話し合い希望を出すようにしてくださいね。

施工されてから日の浅い制度。まずは周知徹底と明文化を

正直に言えば、私はこの「制度」を詳しくは知りませんでした。

心と体の健康を企業が守る義務…という考え方にシフトしてきている、という社会の流れはなんとなくわかっていても、そうした制度が義務化されているということまでは知らないという社会人は決して少なくはありませんし、こうした情報記事によって初めて名前を聞いたという人もいるかもしれません。

特にこうしたまだ制定されてからそれほど年数が経っていない制度については、企業の中でまだ浸透していないということも非常にあること。
まずはこうした制度が法令化されているということ、そしてその実施は義務となっているということを雇用者、労働者ともに「知って」おくことが大切です。
実行され、その結果によって職場環境の改善などが行われれば、雇用者労働者ともにWin-Winの関係となれる可能性をきちんと理解して楽しく働けるようにしたいですね。

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